保育園のお迎えのとき、同じクラスの子が自分のロッカーのシールを指さして「これ、わたしのなまえ」と読み上げていました。3歳になったばかりのうちの娘は、その横で靴下を片方だけはいて走り回っていました。帰り道、抱っこ紐で下の子を抱えながら、頭のなかで「そろそろ教えたほうがいいのかな」という言葉がぐるぐるしていました。
夜、寝かしつけのあとにスマホで「3歳 ひらがな 読める 割合」と検索してしまう。同じことをした夜が、私にもあります。
この記事でわかること
- 3歳でひらがなを読める子はどのくらいか
- 焦りが強くなってしまう理由
- 文字より先に育てたい3つの土台
- 遊びのなかで文字と出会う関わり方
- 逆効果になりやすい教え方
3歳でひらがなが読めなくても大丈夫です
3歳で読めなくても、まったく問題ありません。ひらがなの読み書きは小学校1年生の授業で一から教わる内容で、入学前に完璧に読める必要はないからです。
文字を覚える時期には、想像以上に幅があります。2歳で自分の名前を読む子もいれば、5歳の誕生日を過ぎてから急に読み出す子もいます。しかも、早く読めた子が小学校で成績上位になるとは限りません。小学校2年生ごろには、みんな同じように読めるようになっていきます。
つまり今の時点の差は、身長の伸び方が子どもによって違うのと同じくらいの話です。焦って引っぱり上げるものではないんですよね。
焦りが強くなる3つの理由
焦りの正体は、子どもの遅れではなく「比べる材料が多すぎること」です。ここを分けて考えると、少し呼吸が楽になります。
1つ目は、周りの子が目に入ることです。保育園のロッカー、お誕生日会、支援センター。3歳の子が自分の名前を読む場面は思ったより多く、そのたびに我が子と並べてしまいます。
2つ目は、入園・入学という締め切りが見えてくることです。「年少のうちに」「小学校までに」と期限を区切ると、まだ2年以上あってもそわそわしてきます。
3つ目は、教えても手ごたえがないことです。せっかくカードを買ったのに、10秒で飽きて放り投げられる。あの脱力感は、ちょっとした敗北感に似ています。
SNSで見かける「うちの子3歳で全部読めます」という投稿は、読めた家庭だけが書き込みやすいものです。読めない家庭はわざわざ投稿しないので、目に入る情報は自然と早い子に偏ります。
文字より先に育てたい3つの土台
ひらがなを読む力は、文字そのものよりも先に育つ「音を聞き分ける力」の上に乗ります。だから今やることがあるとすれば、机の前ではなく毎日の会話とやりとりのほうです。
読む前に育っていると安心なこと
- 言葉を音のかたまりで区切れる
- 絵本の話を最後まで楽しめる
- 自分の気持ちを言葉で伝えられる
1つ目の「音のかたまり」は、しりとりや「り・ん・ご」と手をたたきながら言う遊びで育ちます。「りんご」が3つの音でできていると気づけた子は、文字と音を結びつけやすくなります。
2つ目は、絵本を楽しめることです。ここでいう「楽しむ」は、じっと座って聞くことではありません。ページを勝手にめくっても、同じ本を5日連続で選んでも大丈夫です。絵本に対する反応が薄い時期の話は絵本を聞いてくれない2歳のころにも書いています。
3つ目は、言葉でのやりとりです。「今日ね、すべりだいで、しゅーってした」と話せる子は、頭のなかで言葉を並べる練習ができています。この力が、あとから文字と合流します。
遊びのなかで文字と出会う4つの方法
文字は教えるものではなく、生活のなかで出会わせるものだと考えると気持ちが軽くなります。読ませようとせず、子どもが見つける側にまわるのがコツです。
STEP1 自分の名前の1文字目から
全部の文字ではなく、名前の頭文字だけを特別扱いします。「あ、これ〇〇ちゃんの字だ」と生活のなかで見つけるところから始めます。
STEP2 好きなものの名前で遊ぶ
アンパンマン、いちご、バナナなど、子どもの好きなものを1つ選びます。興味のある言葉のほうが、文字としても記憶に残ります。
STEP3 外の看板を探す
散歩やスーパーで「〇〇ちゃんの字、どこかにあるかな?」と探します。宝探しの形にすると、教えられている感じが消えます。
STEP4 読み聞かせで指をなぞる
絵本を読むとき、たまに文字を指でなぞりながら読みます。1冊まるごとではなく、タイトルだけで十分です。
私自身も、意気込んでひらがな表を壁に貼った時期がありました。娘は3日で見なくなりました。代わりに効いたのは、お風呂で「〇〇ちゃんの『さ』はどこだ?」と1文字だけ探すことです。1日1分もかかりません。全部やらなくて大丈夫ですし、4つのうち気楽にできそうな1つだけで十分です。
やらないほうがうまくいくこと
いちばん避けたいのは、確認テストです。「これ読める?」と聞かれる時間が続くと、子どもは文字そのものを嫌がるようになります。
読み間違えたときに言い直しをさせる、机に向かわせて10分以上続ける、きょうだいや友だちと比べる。この3つは、文字への興味を確実に下げてしまいます。
親としては覚えたかどうか知りたくなりますが、確認は関わりではなく採点です。3歳の子にとって、採点される時間は楽しくありません。
読めた文字を「読めたね」と受けとめるだけで十分です。声かけの引き出しは子どもの自己肯定感が育つ声かけにもまとめています。
もう1つ、大人が焦って教え込むと、子どもは「読めない自分」を意識します。文字を覚える前に苦手意識だけが残るのは、いちばんもったいない結果です。
気軽に取り入れられるアイテム
道具は「なくても困らないけれど、あると親が身構えずにすむもの」を1つだけ選ぶのがおすすめです。教材を増やすほど、やらせなきゃという気持ちが強くなります。
お風呂に貼るひらがな表は、机に向かわせなくていいのが利点です。湯船で数を数えるついでに1文字だけ探す遊びができます。5分の入浴時間がそのまま文字との出会いになります。
ひらがなカードは、絵と文字が裏表になっているタイプだとかるた遊びに使えます。並べる、投げる、集めるだけでも構いません。読ませる道具ではなく、遊び道具として渡すと長持ちします。
どちらも、買ったのに使わない期間があるのが普通です。半年ほど棚で眠っていたカードを、娘が急に「これやる」と持ってきたことがありました。タイミングを決めるのは子どものほうなんですよね。
よくある質問
3歳で読める子はどのくらいいますか?
3歳の時点でひらがなをほとんど読めない子のほうが多数派です。読める文字が増えるのは4〜5歳が中心で、5歳を過ぎるとほとんどの文字を読める子が一気に増えていきます。
早く教えたほうが有利になりますか?
読み始めが早くても、小学校に入って1〜2年もすると差はほとんど見えなくなります。早さより、文字を嫌いにならずに入学できるかのほうが影響が大きいです。
まったく興味を示さないときはどうしますか?
いったん文字から離れて、しりとりや歌など音で遊ぶ時間に切り替えて大丈夫です。音を区切って聞く力が育つと、文字への興味はあとから自然についてきます。
書くほうはいつから練習しますか?
読めるようになってからで十分です。書く動作には指先の力が必要なので、お絵かき、粘土、シール貼りなど手を使う遊びが、その準備になります。
何歳まで様子を見て大丈夫ですか?
5歳を過ぎても文字にまったく関心が向かない、言葉の聞き取りに不安がある。この2つが重なるときは、就学前健診やかかりつけの小児科で相談してみると安心です。
まとめ
3歳でひらがなが読めないのは、遅れではなく順番の問題です。文字の前に育つ力があり、それは毎日の会話や絵本のなかで少しずつ積み上がっています。
今日できることがあるとすれば、お風呂で1文字だけ探すくらいの軽さで十分です。教えようとしなくても、子どもは自分のタイミングで文字を見つけていきます。
同じクラスの子が名前を読んでいた日の帰り道、私はずいぶん焦っていました。それでも娘は、私が何も言わなくなったころに「これ、〇〇の字だ」と勝手に見つけてきました。焦らなくて大丈夫です。